尊厳の芸術(東京藝術大学大学美術館) [美術鑑賞]

上野、東京藝術大学大学美術館にて
「尊厳の芸術展 -The Art of Gaman-」内覧会でした。  
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『平成24年は日系人の強制収容から70年の節目を迎えます。
この機会に、太平洋戦争中アメリカ西部で強制収容された日系人が
制作した美術工芸品を集めた展覧会を開催します。
困難の中でも人間の尊厳を失わなかった日系人の作品を通じて
震災から復興する日本と日本人を見つめる機会としたいと考えます。』
HP♡♡♡より

サブタイトルの「The Art of Gaman」とは、つまりは「我慢の芸術」。
なんとなく、他の展覧会と同じような気持ちで観に行ったのですが、
その重みに打ちのめされました。

作品は、有名な作家のものではなく、みんな普通の人が造ったモノです。
砂漠等の劣悪な場所にある強制収容所の暮らしの中で、
あり合わせの板きれや木の枝、紙や、掘り出した貝などで造ったのです。
その素晴らしさに感服し、感動し、涙しました。


始まりはこの、デルフィン・ヒラスナさんという日系2世の方。
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お母さまが亡くなったあと、あちこち片付けていて、
収納室の片隅にしまってあった作品を見つけたことでした。

それは、この小さな木のブローチを初めとする品々でした。
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(展覧会の会場で彼女にお目にかかり、胸のブローチを直接見せていただきました♪)
作品は、ご自分の両親や友人たちがあまり語ろうとしなかった、
1940年代の、強制収容所時代のものでした。

それをきっかけに、知り合いに呼びかけてみると、
その時代に作られた、たくさんの作品があることが分かりました。

多くの日系1世の方々は、強制収容所から出た後、
つらかった日々の思い出がこもった作品を、捨ててしまいました。
作った人は、自分の作品に芸術性を見いだしてはいなくて、
捨てていなかったとしても、目に付かない場所へ葬ってしまっていたのです。

威厳と誇りを捨てず、厳しい時代を生き抜いた日系1世の方々への尊厳の気持ちを、
デルフィン・ヒラスナさんは、作品と体験談を集めた本にしました。

2006年から開かれた作品展は大反響を呼び、
アメリカのスミソニアン美術館では11ヶ月のロングラン、
そして11月3日からは東京藝術大学大学美術館での開催になったというワケです。

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地面の奥深くから掘り出した貝がらで作ったブローチ、
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端布や紙で作った日本人形や、
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木ぎれを集めて作った椅子、木を削って作ったそろばん、紙を編んだ篭
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作品の写真は、すべてガイドブックより

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外からの光がきれいでした。

不自由な生活の中で、材料をかき集めて作ったと思うと、胸が熱くなりました。
一緒に行った友人と「良いモノを観せてもらったね」と言いながら帰りました♪

東京藝術大学大学美術館での開催は12月9日まで、
その後、福島→仙台→沖縄→広島と回ります。
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コメント 8

HOTCOOL

深イイ話ですね~
先人たちの苦労、努力があって今の私たちがいるのですね。
by HOTCOOL (2012-11-03 05:40) 

mutumin

私も先日この作品展の話をテレビで見て、感動してました。
日本人らしい心と物作りだなぁtって・・・
どんな苦境の中でも日本人の謙虚で耐えながらもしっかり自分を持っている。それが物作りに繁栄されている素晴らしい作品展だと思いました。
何も材料がない中でも、その辺にある向日葵の種や貝で花のブローチを作ってるのって、本当に凄いよね!
by mutumin (2012-11-03 06:05) 

pn

そんな1世たち家族のため最前線に立った二世たちは背中から撃たれる覚悟でつらい作戦をこなして行きました。
by pn (2012-11-03 06:39) 

親知らず

話は全然違うけど、日本人は強制収容所に押し込められたからと言って
いつまでもグズグズアメリカを非難しないでしょう。
どこかの国と何が違うんだろうなぁ。過去を振り返るしかない貧しさなのか
(経済的だけじゃなくて心の問題とか)国民性なのか。
難癖を付けるエネルギーを前に進むエネルギーにすれば良いのに。
それにしても日本人の器用さは世界に誇れますね。
by 親知らず (2012-11-03 08:02) 

パウロ

とても良い話でここでも話題にします
世界中の日系移民の組織は毎年海外日系人大会とパンアメリカ日系人大会という二つの集まりをしています。今でもアメリカ移民はリーダーです。移民の数が一番多いブラジルも戦時中は財産を没収されたり迫害にあいました。残念なのは『勝ち組』といわれる組織の中に売国奴がいた事です。でも、今は没収された病院などを再建したりして、一番信頼される人種になりました。
by パウロ (2012-11-03 11:37) 

まお

不自由な環境であるからこそ
色々工夫されてすばらしい作品が出来るのかも
作品には、作った人の心が宿ってて
見る人に感動を与えるのでしょうね
実際に見てみたいです^^;
 

by まお (2012-11-03 16:02) 

フサヲ

どれも、繊細な作りですね。
人間としての尊厳を、豊かになった後であっても失わなかったからこそ、
作ったものは仕舞い込んでしまったのではないかと思いました。
by フサヲ (2012-11-03 16:42) 

まほ

☆ HOTCOOLさん
逆境にあっても、日本人の誇りを失わなかった人たちに、
今さらながら、心から敬意を表したくなりますね。

☆ mutuminさん
NHKの「クローズアップ現代」でやったそうですね。
閉ざされた環境だからこそ、
何か作ることで、気持ちを紛らわせたかったのかも知れません。
私だったら何をしていただろう、とも、考えてしまいました。

☆ pnさん
戦争中は、すべてが異常だったのだと思います。
普通の神経だったら、人が人を殺すなんて出来るワケがありません。

☆ 親知らずさん
私もそう思いました。
どこかの国と違うのは、国民性だと思いますよ。
器用さと前向きな姿勢は、本当に、世界に誇れると思います。

☆ パウロさん
そうですか・・・日系の皆さんは、口に出せないご苦労をなさったことでしょう。
胸が痛みます。
過去に何かあった人でも、今は良いことをされているなら良いですね。

☆ まおさん
私もそう思います。
展示してあるのは、来歴を考えなくても素晴らしい作品です。
でも、強制収容所の中で作られたと思うと、もっと感動します。
ご覧になれると良いのですが。。。

☆ フサヲさん
ええ、おっしゃる通りだと思います。
それで捨ててしまったり、しまい込んだりしたのです。
つらい思い出が染みついていたのでしょうからね。。。
by まほ (2012-11-04 02:51) 

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